【事例紹介④】神城断層地震 復旧工事 奉納(ぶのう)大橋

平成26年(2014年)11月22日、長野県北部で発生したマグニチュード6.7の地震により、小谷村、白馬村では、家屋の全壊や、道路崩壊といった、大きな被害が発生しました。
当社は、長野県、白馬村、小谷村からの委託を受け、被災した橋梁18(県道3、村道15)、道路状況調査および復旧計画を行いました。

調査・補修設計を行った橋梁のうち、小谷村の県道に架かっている『奉納(ぶのう)大橋』についてご紹介します。

城断層地震について

●発生日時:平成26年11月22日 22時8分
●震源場所:長野県北部 北緯36度41.34分 東経137度53.27分
●震源の深さ:5km
●震源の規模:マグニチュード6.7
●最大震度:震度6弱 長野市、小川村、小谷村
      震度5強 白馬村、信濃町
●地震の種類:内陸型地震(逆断層型)
●人的被害:死者/行方不明者 0人、負傷者 46人
●人家被害:全壊 81棟、半壊 175棟、一部損壊 2,146棟
●非人家被害:345棟
●災害救助法適用:北安曇郡白馬村、小谷村、上水内郡小川村
      ※長野県危機管理部「長野県神城断層地震による県内の被害状況等について」より

写真 逆断層発生箇所

逆断層発生箇所 段差が85cmにも及びました

白馬村堀ノ内地区 被害状況写真

大きな被害が発生した白馬村堀ノ内地区

「奉納大橋」の誕生

長野県小谷村、国道148号線の下里瀬交差点から、東の山麓に向かって一般県道奉納中土停車場線を進むと「奉納大橋」に差し掛かります。
奉納大橋は、昭和61年(1986年)に架けられました。
当時、長年利用されていた山際道路の法面が、地すべりのため通行止めとなり、県は、安全性の面から、渓谷の上に橋梁を架ける計画を決定したのです。

  
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写真 奉納大橋

奉納大橋 (2017年8月撮影) 橋の下が渓谷になっています

●型式:鋼鈑桁橋+上路鋼トラス橋+鋼鈑桁橋
●橋長:11.5+79.8+13.5=104.8m
●幅員:5.0m
●竣工:昭和61年(1986年)11月

 

奉納大橋の設計図

 まだCADが一般的に普及していなかった時代、図面は全て手書きでした。当社に保管されている奉納大橋詳細設計図の一部をお見せします。 

写真 竣工当時の設計図 写真 竣工当時の設計図

設計者コメント (常務取締役 久保田 努)

当時は、手書きで作図するのが当たり前で、構造計算もコンピューターに頼ることはできず、全て手で計算したものです。
橋の防護柵をよくみると、一本一本が緩やかにカーブしていることがわかると思います。真っすぐじゃ面白味にかけるので、ちょっとデザイン性を持たせのです。
きっと、製作会社にはいい迷惑だったと思いますよ(笑)。

写真 防護柵

緩やかなカーブを描く防護柵

 

城断層地震による被災状況

奉納大橋側面図

奉納大橋側面図

1.A1 橋台(奉納温泉側)における損傷
伸縮装置、可動支承:遊間異常

主桁の遊間

A1主桁の遊間(設計時150mm→被災後80mm)

2.  P1 橋脚(奉納温泉側)における損傷
・トラスと鈑桁の掛け違い部で、アンカーボルトが全箇所破損
   →余震がくると落橋の可能性あり
・トラス可動支承(ピンローラー支承)の損傷

アンカーボルト破断状況写真

P1上の側径間主桁のアンカーボルト破断状況

ローラー支承の損傷写真

P1トラス上流側ローラー支承の損傷

3.  P1 橋脚上部
・伸縮装置ゴム破損

伸縮装置の破損状況写真

P1桁端衝突による伸縮装置の破損

旧工事の概要

奉納側径間の応急復旧

 桁下に、落橋防止と、その後の復旧工事を目的としたベントの設置

応急復旧図

応急復旧図

【主径間】

① P1伸縮装置取替え工 1基
③ P1ローラー支承取替え工 支承台座打替え工

【奉納側 側径間】

①主桁P1側端部切断工
②主桁移動工
③P1支承取替え工

復旧計画図(側面図)

復旧計画図(側面図)

補足! P1ローラー可動支承の取替方法
 
   ①ジャッキアップ用ブラケット設置
 ②仮設補強部材の設置(軽量な型鋼の組み合わせ材)
 ③ジャッキアップ
 ④支承取り換え
 ⑤ジャッキダウン
図 仮設部材の配置

仮設部材の配置

写真 修復が完了した奉納大橋

修復が完了した奉納大橋(2017年8月撮影)