橋梁点検 潜入レポートをお届けします!

 こんにちは、総務部のMです。

 大型の台風21号が去った平成29年10月某日、乗鞍岳の善五郎の滝で橋梁点検作業が行われました。 技術部スタッフから「近くだから、HPの取材に来ますか?」と声がかかり、「行きます!」と即答!
「どうやって橋を点検するの?」「そもそも橋の点検って何をするの?」そんな疑問を解決するため、点検現場を密着取材してまいりました!

 現場に行く前に、「橋梁点検」の概要について簡単にご説明いたします。

ぜ、橋梁点検が必要なのか?

  高度経済成長期に建設された多くの橋梁は、50年余りが経過し老朽化が進んでいます。平成24年(2012年)12月に「笹子トンネル天井板落下事故」が発生し、9人の尊い命が犠牲になりました。この事故を契機に、社会インフラの維持管理の重要性が再認識され、国土交通省は、本格的なメンテナンスサイクルを回すための取組みに着手しました。

静岡新聞 2012年12月3日夕刊

 平成25年に道路法の一部改正が告示、それを受け「定期点検に関する省令・告示」が平成26年(2014年)3月に公布されました。さらに市町村における円滑な点検の実施のため、各構造物ごとに「定期点検要領」が平成26年6月に策定され、橋梁やトンネル等の構造物は、それぞれの要領に基づいた定期点検が実施されることになりました。

定期点検に関する省令・告示の主な内容
① 橋梁(約70万橋)・トンネル(約1万本)等は、国が定める統一的な基準により、5年に1回の頻度で、近接目視により点検を行うこと
② 点検、診断の結果等について、記録・保存すること
③ 統一的な尺度で健全性の診断結果を分類すること
 
定期点検要領:トンネル、橋などの構造物ごとに策定
① 構造物の特性に応じ省令・告示に沿った具体的な点検方法
② 主な変状の着目箇所、判定事例写真等
 
 
 つまり、平成29年現在、全国で実施されている点検作業は、「5年に1回」の1サイクル目の最中なのです。
梁点検業務の流れ

 長野技研では、自治体や企業からの委託を受け、主に橋梁(道路橋、歩道橋、鉄道橋等)、道路附属物(標識、照明等)、トンネル等の点検を実施しています。
橋梁点検を例にとり、点検業務の作業の流れをご説明します

1.資料収集
 橋梁台帳及び前回の点検記録について貸与を受け、情報を整理し業務計画書の作成及び関連資料等の収集を行います。
2.現地踏査
 定期点検に先立って現地踏査を行います。橋梁の劣化や損傷の程度、立地環境、交通状況を確認するとともに、点検時の交通規制の要否、点検方法(梯子/ロープアクセス/点検車等)、必要な機材等を検討します。
3.打合せ
 発注者と業務の概要、スケジュール、使用する定期点検要領・図書・基準、緊急時の連絡体制等について確認をします。
4.関係機関との事前調整
 必要に応じて、管轄する警察署や、地元自治会等の関係機関との調整を行います。
5.点検の実施
 現地で近接目視、触診、打音検査等の点検作業を実施し、損傷の評価・記録をします。
6.診断
 緊急対策の必要性の有無、健全度の評価(Ⅰ~Ⅳ)を判定します。診断の結果は、所定の「点検表記録様式」に記録します。
7.報告書作成
 点検記録、評価を報告書にとりまとめ、発注者に提出します。
ざ、善五郎の滝橋梁へ!

それでは、いよいよ現場レポートです。

所在地:松本市 安曇 乗鞍高原   »Map
橋梁名:善五郎の滝 橋梁
構 造:単純非合成H桁橋
橋 長:13m
竣 工:平成8年

現地到着後、まずミーティングを行い、 作業内容と安全確認を行います。

必要な資材を持ち、紅葉の林道を下ります。
今回の点検では「梯子」を使います。

10分弱で、善五郎の滝 橋梁に到着しました。
すぐ近くに滝つぼがあるため、橋梁付近は絶えず細かいシャワーが降りかかります。
夏なら爽快だったかもしれませんが、10月の乗鞍では作業着の上にカッパを着ていても冷えてきます。

これが善五郎の滝です!
落差21.5m、幅8mの滝は、近くでみるとかなりの迫力!

国立公園内にある善五郎の滝は、乗鞍高原の人気観光スポットの一つ。橋の上は、ちょうど良いビューポイントとなっています。
点検当日も平日にもかかわらず、何組もの観光客がおみえになりました。

早速、準備にとりかかります。
まずは三角板を設置。
 
    

黒板に必要事項を記入します。

 黒板は、損傷個所の撮影時に一緒に使います。

床板の状態を確認するため、付着していた落ち葉を竹ぼうきで履きます。

持ち込んだ道具の中に「なぜ竹ぼうき??」と疑問に感じていたのですが、このためだったのだと納得。

この橋は手すりと床板が木製で出来ています。
腐食、虫食い、塗装の禿げが無いか等、柱の1本1本を細かく点検していきます。


 橋梁の構造によって、変状しやすい場所については、追跡調査ができるよう写真撮影をします。

 ねじのゆるみが無いかも、1本ずつ確認します。

床板も1枚ずつ点検。

午前中の作業は、ここまでで終了しました。

 

午後は、橋台の点検からスタート。
橋台と桁の接合部(支承部)に枯葉や土砂が詰まっていました。直接目視の妨げとなるため、スコップで取り除きます、

橋の下に潜り込み、梯子を用いて近接目視による点検をします。

この橋は、桁が「耐候性鋼材※」でできています。
(一社)日本橋梁建設協会の「さび評価基準」と照らし合わせながら、さびの状態を診断します。

※耐候性鋼材:大気中での適度な乾湿の繰り返しにより表面に緻密なさびを形成する鋼材です。緻密なさびが鋼材表面を保護し、さびの進展が時間の経過とともに次第に抑制されます。耐候性鋼は、適切な管理をすれば無塗装で使用できるので、メンテナンス費や塗装費を低減できます。

対岸の橋台を点検するため、持参したゴム長に着替えて川に入りました。
台風の後で水嵩が増しています。濁流に巻き込まれないよう、細心の注意を払います。
対岸に到着。
無事に点検作業が終了しました。

現地作業終了後、社内で点検記録票を作成し、報告書にまとめます。

じたこと

 高度経済成長期に集中的に整備され、老朽化が懸念されている日本の社会インフラ。現在は、作る時代から守る時代への転換期ともいえます。
 これまでのように、症状が出てから対処する対症療法的な維持管理では、橋梁が急速に高齢化するこれからの時代は、今後対応できないことが予測されます。
財政状況の制約がある中で、効率的で合理的な維持管理を進めていくための第一歩として、橋梁の現状を把握することは大変重要なことです。今回作成した点検記録や診断結果が、この先蓄積する「橋梁のカルテ」の基本データとして、将来に渡って活用されていくことを期待します。

 今回、実際の作業現場を取材し、橋長13mの歩道橋の隅々まで地道に点検する当社技術者の姿から、「橋梁屋」としてのプロ意識を垣間見ることができました。
長野技研では、複数の点検業務が現在進行中です。機会があれば、橋梁点検車を使ったアーチ橋の点検作業にも潜入してみたいと思います。

 
最後までご覧いただき、ありがとうございました。