【橋梁の基礎知識 その2-橋梁の構造形式の表現について】
「橋梁の基礎知識 その1」では、橋梁の構造と各部の名称、橋梁の種類についてご説明いたしました。ここでは、橋の構造形式の表現について、お伝えしたいと思います。
構造形式ってなに?
みなさんがお住まいになっている地域で、橋の説明が書かれたパネル等を見かけたことはありませんか?
下の写真は、富山県射水市にある日本海側最大級の斜張橋「新湊大橋」と、説明パネルの一部です。
2017年9月撮影 |
ここに「構造形式」という記載があります。この「構造形式」には、その橋の全体の構造、材料、工法等、橋の設計に関する基本的な情報が含まれているのです。
橋の構造形式を分解する
橋の構造形式を現わす際、色々な表現の仕方がありますが、一般的には以下の項目を組み合わせて表現します。
力学的な全体構造(単純、連続、アーチ、斜張、吊り) そして・・・ |
■例題1■
『3径間連続ワーレントラス橋』
全体構造 + 桁側面
トラス橋の場合、「鋼製」で「下路式」が一般的です(下図)。
したがって、この場合は、
・構造:3径間連続
・材料:鋼(※省略)
・桁の側面形状:下路(※省略)ワーレントラス と、理解できます。
■例題2■
『3径間連続プレストレストコンクリート上路ワーレントラス橋』
全体構造 + 材料 + 通行位置 + 桁側面
例題1の構造に追加されている部分「プレストレストコンクリート」「上路」が、特殊事項に該当します。
イメージとしては、下図のような橋になります。
なんとなく、ご理解いただけましたでしょうか?
それでは、これから「梓川」に架かる橋を例に解説します。
1.あずみの橋(自転車道)
【構造・桁断面】
4径間連続鈑桁橋 × 2連
鈑桁:鋼板や型鋼を組み合わせて断面が「I 形」なるように組み立てた桁。プレートガーダー[plate girder]ともいいます。
●側面図
●断面図
2. アルプス大橋(国道147号)
【構造・材料・桁断面】
5径間連続鋼変断面細幅箱桁橋
この橋の桁には、耐候性鋼材(Ni、Cr、Cuが少し入っている)が使用されています。
箱桁:鋼板、またはコンクリートにより箱状にした桁。鋼板による場合はボックスガーダー[box girder]とも呼ぶ。
※耐候性鋼材:大気中での適度な乾湿の繰り返しにより表面に緻密なさびを形成する鋼材です。緻密なさびが鋼材表面を保護し、さびの進展が時間の経過とともに次第に抑制されます。耐候性鋼は、適切な管理をすれば無塗装で使用できるので、メンテナンス費や塗装費を低減できます。
3.梓川橋(長野自動車道)
【構造・桁断面】
単純鈑桁+3径間連続鈑桁 ×2連+単純鈑桁
●側面図
4.梓橋(県道48号)
この橋は、複数の橋から構成されているため、少し複雑です。
・本橋:ゲルバー(Gerber)鈑桁橋 11径間
・拡幅部:4径間連続鈑桁橋 × 2連
・歩道橋:単純鈑桁橋 × 11連
ゲルバー構造を、別名「カンチレバー構造」ともいいます。詳しくは「橋梁の基礎知識 その1」をごらんください。
5.梓川橋(鉄道橋)
【特殊事項・構造・桁断面】
下路単純鈑桁橋 × 9連
【下路式 断面図】 |
6.中央橋(県道320号)
【材料・構造・桁断面】
ポストテンション方式プレストレストコンクリート単純T桁橋 × 5連
※プレストレストコンクリート [Prestressed Concrete]
略してPCとも呼びます。Pre(プレ)前もって、stress(負荷)をかけるという意味から、直訳すると「あらかじめ応力を与えられたコンクリート」となります。PCの技術を用いることによって、コンクリートの最大の弱点(圧縮には強いが引張には弱い)を克服することができます。コンクリートに「プレストレス」をかけるには、「PC鋼材」と呼ばれる高強度の材料を使います。プレストレストコンクリートをつくるためには、PC鋼材を引っ張って(この作業を「緊張」といいます)、張力を与えた後にコンクリートと固定します。プレストレスの与え方には、プレテンション方式とポストテンション方式の2つがあります。
※ポストテンション方式
コンクリート部材が硬化した後に、その内部に設けられたPC鋼材を緊張する方式です。
※プレテンション方式
PC鋼材をあらかじめ所定の力・位置に緊張しておき、これにコンクリートを打込み、硬化した後に緊張力を解放してプレストレスを与える方式です。
7.梓川橋(県道25号)
【工法・構造・桁断面】
活荷重合成単純鈑桁橋 × 6連
※合成桁
鉄筋コンクリート床版と鋼桁を、ずれ止め(スタッドジベル、またはスタッドともいう)により接合し、一体として外力に抵抗するようにした桁をいいます。施工法から、「活荷重合成桁橋」と「死荷重合成桁橋」に分けられます。
※活荷重:車道上の自動車荷重、歩道上の群衆の荷重等、移動する荷重
※死荷重:構造物自体の重さや付属設備による荷重
スタッドジベル = Stud(英語)+ Dubel(ドイツ語)
8.八景山橋 – やけやまばし(市道)
【材料・構造】
鉄筋コンクリート単純床版(スラブ)橋×4連
注)梓川が増水すると水没するため、通行止めになります。
※鉄筋コンクリート[Reinforced Concreat]
略してRCとも呼びます。鉄筋で補強(Reinforced)した、コンクリートと鉄筋の複合材料です。コンクリートの中に鉄筋を埋め込んで、一体になって働くようにしたものです。鉄筋のかわりにPC鋼材を用いて、それを引張ることによってあらかじめコンクリートに圧縮力を与えたものが、前述したPC(プレストレストコンクリート)です。
9.新淵橋(国道158号)
【構造・桁断面】
2径間連続鈑桁橋
この橋の桁には、耐候性鋼材が使用されています。
10.竜安橋
【桁側面・構造】
ランガー桁橋
11.雑炊橋
【材料・構造】
PC斜張橋
12.稲核橋
●写真上(新橋)
【材料・特殊事項・構造】
鋼上路2ヒンジ・ソリッドリブアーチ橋
●写真下(旧橋)
鋼上路スパンドレルブレーストアーチ橋
13.前川渡大橋
【特殊事項・桁側面・構造】
中路ローゼ桁橋
14.穂高橋(上高地)
【材料・構造】
プレストレスト木床版橋
15.明神橋(上高地)
単径間無補剛吊橋
以上、橋梁の構造形式の表し方についてのご説明でした。