今回は、弊社が設計・構築した県災害情報共有システム「長野県版インフラデータプラットフォーム」について、ご紹介させていただきます。
このシステムは、クラウドGIS「ArcGIS Online ※1」を用いて、災害時に現地機関の職員が現場写真や踏査結果などを登録し、関係者がリアルタイムで現地の状況を閲覧できるシステムです。
クラウド上にあるシステムですので、サーバー機器の設置や高価なソフトウェアは不要です。Webブラウザやスマートフォンのアプリが利用できる環境であれば、「誰でも」「どこからでも」使用することができます。
昨年10月の台風19号や今年7月の豪雨災害時において情報共有に手間がかかったことから、災害時の初動体制をよりスムーズに行う目的で開発されました。
今後、運用サポートも含め、弊社にてシステム管理を行い、将来的には、インフラの効果的・効率的な維持管理などへの活用を目指しています。
(※1 ArcGIS Online はESRIジャパン株式会社の製品です)
GISって何?
「GIS」という単語、皆さんご存じでしたか?「GPSは聞いたことがあるけど、GISって何?」って思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
システムの内容をご説明する前に、本システムの基盤となっている「GIS」について解説いたします。
● 国土地理院HPより » https://www.gsi.go.jp/GIS/whatisgis.html
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。
● ESRIジャパンHPより » https://www.esrij.com/getting-started/what-is-gis/
地球上に存在する地物や事象はすべて地理情報と言えますが、これらをコンピューターの地図上に可視化して、情報の関係性、パターン、傾向をわかりやすいかたちで導き出すのが GIS の大きな役割です。人の活動において場所に関する情報を得たい場面は数多くあります。「駅から徒歩 10分圏内にある物件は?」、「店舗を出店するのに最適な場所は?」、「感染症の発生率が高い地域はどこ?」など、GIS は場所に関する問いに対する答えを地図上にビジュアルに表現しますので、文字や数値であらわされる表データを見る場合と較べて容易に状況を理解することができます。
一方、GPSとはGlobal Positioning System(全地球的測位システム)と呼ばれる、「位置を知るための仕組み」です。
地球を回る24個の衛星から発信される電波を同時受信して解析することにより、受信位置の3次元的な位置情報(緯度,経度,標高)を取得することができ、カーナビやスマホの地図など、身近な場所で多く利用されています。
まとめると、
GPS・・・現在地の位置情報を得ることができるシステム
GIS・・・地図やそれに付随する様々な情報を得ることができるシステム
システムの特徴
それでは、本システムの特徴についてご紹介いたします。
現時点では、以下の3つの機能があります。
- 現地状況(写真・コメント)の共有
- 被災地ごとの情報の共有
- 現地写真のみの共有
現地状況(写真・コメント)の共有
スマートフォン等を利用し、移動しながらボタンをタップするだけで、データ収集が可能です。写真やコメントは、位置と関連付けて記録します。
現地で撮影した写真やコメントなどの情報は、関係者間でリアルタイムに共有することが可能です。
被災地ごとの情報の共有
「被災地」ごとに以下の情報を共有できます。「被災地」は、一体的に対応すべき範囲をまとめて1データとして扱います。
● 対応状況
● 交通規制等
● 時系列の対応状況(必要に応じて)
● その他
現地写真のみの共有
緊急時や現地で時間がない場合に、写真のみをリアルタイムに共有することができます。
クラウドGISの活用事例
ここでは、クラウドGISを利用したその他の活用事例をご紹介いたします。
意思決定支援のためのダッシュボード機能
関係者が、地図やグラフなどを組み合わせた画面を見て、刻々と変化する状況を適切に判断し、グループで共有できます。
ダッシュボードには、必要に応じて外部サイト(ライブカメラ等)を表示することも可能です。
【 ダッシュボード例:災害情報 】
【 ダッシュボード例:インフラ維持管理 】
BIM/CIMとの連携
3次元地形測量によって得られた点群データや、構造物の3次元データの表示、関連付けが可能です。登録地点に点群データがある場合、WebScene等の3D-Viewerで、3D(点群)を閲覧できます。
【例 土砂崩落地の点群データ】
【例 河川の3D縦横断図】
↓
【例 橋梁の3Dモデル】
さらに「計測」ツールを使用すると、3Dでの距離や平面上での面積を計測することも可能です。
このようにクラウドGISを活用することで、効果的・効率的な維持管理が実現します。
その手間、もう必要ありません!
✓ 写真を撮影し、撮影位置を地図にプロット・・・
✓ 現地で地図に記録した位置情報(点・線・面)を自分の地図にプロット・・・
✓ 現地で取得した地物に関する修正事項をもとに、自身にデータを修正・・・
✓ 変化する数値を再集計し、グラフや地図をその都度作成・・・