【橋梁の構造と種類について】
橋梁(橋;bridge)とは、道路、鉄道、水路などの輸送路において、輸送の障害となる河川、渓谷、湖沼、海峡あるいは他の道路、鉄道、水路などの上方にこれらを横断するために建設される構造物の総称です。
市街地において効率的な土地利用の観点から、道路上あるいは河川上の空間に連続して建設される高架橋も橋梁の一形態です。
橋梁の構造
橋梁の構造
- 上部構造[superstructure]
橋梁の中で、障害となるものの上を横断する部分をいう。下部構造の対語。上部工ともいう。 - 下部構造[subtructure]
上部構造を支える構造体で、通常は橋台、橋脚および基礎を指す。上部構造の対語。下部工ともいう。上部構造と下部構造とに明確に分けられない橋梁もある。 - 橋台(きょうだい)[abutment]
橋梁の両端にあって、一般部と橋梁部の間を仕切っているもの。アバット、アバットメントともいう。上部構造を支えると共に、一般部の土が崩れないようにする擁壁の役割がある。 - 橋脚(きょうきゃく)[bridge pier]
2径間以上の橋梁の中間部にあって、上部構造を支えるもの。ピアともいう。 - 躯体(くたい)[frame body]
橋台、橋脚において上部工を支えている本体部分をいう。 - パラペット[parapet]
橋台において躯体より上の部分に突出した部分をいう。上部構造と一般部を仕切っている。胸壁ともいう。 - 杭基礎(くいきそ)[pile foundation]
杭を用いた基礎。「直接基礎」に不向きな軟弱な地盤に用いられる。深い位置にある強固な地盤まで打ち込む「支持杭」と杭と周囲の地盤との摩擦によって支える「摩擦杭」とがある。 - ケーソン基礎[caisson foundation]
「ケーソン」を用いた基礎。大きな荷重を受ける場合やほかの工法では施工が難しい場合などに用いられる。一般的にケーソン基礎はケーソン工法で造られる場合が多いが、ケーソン工法によらないケーソン基礎もある。- ※ケーソン[caisson]:水中構造物、地下構造物、あるいはその他一般構造物の基礎等を構築するために用いる函(はこ)型または筒状の躯体。
- ※ケーソン工法[caisson method]:構造物の基礎や地中構造物を地上でつくり、その底部の土を掘削しながら構造物を地中に沈設させる工法の総称。
- 支承(ししょう)[support ; bearing ; shoe]
上部構造と下部構造との間に設置される部材で、上部構造の荷重を下部構造に伝達するための機構をもつ。温度変化や弾性変形による上部構造の伸縮およびたわみによる回転が自由な構造とし、さらに、地震力や風力などの上部構造に作用する横荷重、地震時などにおける予期しない上揚力に対しても十分耐えられる構造でなければならない。沓(くつ)、シュー(shoe)ともいう。(橋梁屋の中には「沓」の読みをシューと勘違いしている人もいる。)
支承は、可動性の有無によって固定支承と可動支承に分類され、また、支圧面の形状により平面支承、線支承、ピン支承、点支承、球面支承等に分類される。さらに使用する材料の種類により鋼製支承、ゴム支承およびコンクリート製支承に分類される。 - 固定支承[fixed support]
支承の位置において、上部構造の回転は自由であるが、水平移動に対しては拘束する機能を有する支承。 - 可動支承[movable support]
上部構造を支持し下部構造に支持力を伝える構造部分のうち、回転以外に変位も妨げないようにした支持構造で、通常は特定の方向にのみ可動とする。 - 伸縮装置[expansion joint ; expansion apparatus]
橋梁は温度変化によって伸縮するが、橋梁の端部においてその伸縮を可能なように路面に設ける装置。鋼製の櫛形上の装置が一般的であるが、自動車の走行性が悪くまた路面損傷の原因となることから、最近ではゴム製、あるいは伸縮継手をなくそうとする傾向にある。 - 主桁(しゅげた)[main girder]
橋台または橋脚間で、上部構造全体の荷重を支持して下部構造に伝える桁をいう。断面形状によってI桁と箱桁、材料によって鋼桁、鉄筋コンクリート桁、PC(プレストレストコンクリート)桁などがある。
橋梁の寸法
- 橋長(きょうちょう)[length of bridge]
橋の全長のことで、通常左右両岸の橋端にある伸縮目地の外端間の距離をいう。 - 支間(しかん)[span]
橋を支持する点の間の距離。橋の上部構造は支承によって支持されており、その支承の中心間距離をいう。 - 径間長(けいかんちょう) ※「河川構造令」上の「径間」をさす
橋脚では橋脚の中心間の距離を、橋台の場合は橋台前面からの距離を指す。 - 純径間[clear span]
橋台と橋脚または、橋脚相互の側壁面間の距離。純スパンともいう。
橋梁の種類
構造別の橋梁の種類
- 桁橋(けたばし)[girder bridge]
荷重に抵抗する梁を下部構造に載せただけの橋。桁の断面形状には、T桁、I桁、箱桁がある。単純桁橋や連続桁橋等があり、比較的支間の短い橋に利用される。 - トラス桁橋(トラスげたきょう)[truss bridge]
三角形に組み合わせた骨組み(トラス)で桁をつくった橋。古くは木材、最近では鋼材やコンクリート製の部材を使って、上部構造を構成する。基本的には桁橋を応用した形式で、上下弦材で曲げモーメント、斜材でせん断力を負担する。桁橋よりも支間長を長くすることができる。
- アーチ橋[arch bridge]
上向きに弧を描く曲がりを付けた梁(アーチ)を主な構造とする橋。鉛直荷重(垂直に掛かる荷重)に対して、アーチの圧縮力で抵抗する。支間長が数百メートルになる橋もある。現在の世界最長支間は、中国のLupu橋の550m、日本での最長支間は、大阪市にある新木津川大橋の305mである。
- ラーメン橋[rigid frame bridge]
主桁と橋脚を一体化した構造の橋。広い空間を内側につくり出すことができる。各部材が強力に連結され、すべての部材に曲げモーメント(部材を曲げようとする力)、せん断力(物体内部でずれを生じさせる力)、および軸力が作用する。最近は、上部を鋼、橋脚をコンクリートとする複合ラーメン橋も数多く建設されている。 - 斜張橋(しゃちょうきょう)[cable-stayed bridge]
吊り橋と同様に塔を建て、塔から斜めに張った複数のケーブル(斜材)で桁やトラスを吊る構造の橋。吊り橋と違い、ケーブルを斜めに吊るため、桁には曲げモーメントとせん断力の他に軸力も発生する。 桁は連続桁で、比較的長大橋に用いられる。また、美観上にも優れていることから、支間の小さい橋や歩道橋に用いられる場合もある。 - 吊り橋[suspension bridge]
支間長が長くなると、前述の形式では架橋が難しくなる。そのため非常に大きな引張耐力(引っ張りに耐える力)を持つ鋼製ケーブル(主ケーブル)を塔の上に張り渡す吊り橋が採用される。端を地盤や大型の橋台へ定着させ、主ケーブルから垂らした吊り材で通路面となる桁(補剛桁)あるいはトラス(補剛トラス)を支える。外力に対してケーブルの引張力で抵抗する構造の橋となる。現在の世界最長の支間長は、1915チャナッカレ橋の2,023m。日本での最長支間は、明石海峡大橋の1,991m。
材料別の橋梁の種類
- 木橋(もっきょう)[timber bridge]
木材まはた木質材料を主要構造部材とする橋。丸太や製材を用いた古来の橋と、集成材等の木質材料を用いた近代的な橋を含む。 - 石橋(いしばし)[stone bridge]
石・れんがなどを用いた橋。 - 鋼橋(こうきょう)[steel bridge]
主要構造に鋼材を用いた橋。コンクリートより橋を軽くできるため支間長の長い橋によく使われる。 - コンクリート橋[concrete bridge]
コンクリートを主材料に用いた橋。無筋コンクリート橋、鉄筋コンクリート橋(RC橋)、プレストレストコンクリート橋(PC橋)およびプレストレスト鉄筋コンクリート橋(PRC橋)等の総称。 - 複合橋
異なる材料(例えば、鋼材とコンクリート)により合成した構造で、互いの特性を生かした構造の橋。主構造の構造により、合成橋と混合橋に大別される。
通路の位置による橋梁の種類
- 下路式
路面が主桁または主構の下部に設けられているもの。跨線橋、跨道橋や河川の横断など、桁下空間の余裕がない場合に採用される。 - 中路式
路面または軌道面が、主桁やトラスあるいはアーチなど主構造の中間の位置に設けられている橋。 - 上路式
路面が橋本体の上面に位置しているもの。桁下に十分な空間(余裕高)がある状況で採用される。
桁の断面形状による橋梁の種類
I形、H形、T形、箱型、格子 等
桁のつなぎ方による種類
- ゲルバー[gerber]
通常、主桁は橋脚の支点で支えるが、ゲルバー橋は、吊り桁を両側の橋脚から張り出した片持ち梁が、ヒンジを介して保持する。カンチレバー[cantilever]ともいう。 - 単純桁・連続桁
複数径間にそれぞれ独立して桁を架けるのが単純桁橋。このような構造は走行性が悪く、騒音・振動の原因にもなるため、つなぎ目を作らない連続桁が採用されている。
参考文献
「土木用語大辞典」社団法人土木学会編(1999),技報堂出版株式会社.
「信濃の橋百選」信濃の橋刊行会(2011), 信濃毎日新聞社.
「信濃の橋百選」信濃の橋刊行会(2011), 信濃毎日新聞社.