【橋梁の構造形式の表現について】
「橋梁の基礎知識 その1」では、橋梁の構造と各部の名称、橋梁の種類についてご説明いたしました。ここでは、橋の構造形式の表現について、お伝えしたいと思います。
構造形式ってなに?
みなさんがお住まいになっている地域で、橋の説明が書かれたパネル等を見かけたことはありませんか?
下の写真は、富山県射水市にある日本海側最大級の斜張橋「新湊大橋」と、説明パネルの一部です。
ここに「構造形式」という記載があります。この「構造形式」には、その橋の全体の構造、材料、工法等、橋の設計に関する基本的な情報が含まれているのです。
橋の構造形式を分解する
橋の構造形式を表す際、色々な表現の仕方がありますが、一般的には以下の項目を組み合わせて表現します。
力学的な全体構造(単純、連続、アーチ、斜張、吊り)
材料(鋼、コンクリート)
通行位置(下路、中路、上路)
断面形状(I形、T形、Box形)
桁の側面形状(トラス、ランガー、ローゼ)
架設工法(コンクリートの場合)
そして・・・
当然の事項は省略し、特殊な事項は追加して記載します。
■例題1■
『3径間連続ワーレントラス橋』
⇒全体構造 + 桁側面
トラス橋の場合、「鋼製」で「下路式」が一般的です(下図)。
したがって、この場合は、
・構造:3径間連続
・材料:鋼(※省略)
・通行位置:下路(※省略)
・桁の側面形状:ワーレントラス
と、理解できます。
■例題2■
『3径間連続プレストレストコンクリート上路ワーレントラス橋』
⇒全体構造 + 材料 + 通行位置 + 桁側面
例題1の構造に追加されている部分「プレストレストコンクリート」「上路」が、特殊事項に該当します。
イメージとしては、下図のような橋になります。
なんとなく、ご理解いただけましたでしょうか?
それでは、これから「梓川」に架かる橋を例に解説します。
1.あずみの橋(自転車道)
【構造・桁断面】
⇒4径間連続鈑桁橋 × 2連
●側面図
●断面図
2. アルプス大橋(国道147号)
【構造・材料・桁断面】
⇒5径間連続鋼変断面細幅箱桁橋
●断面図
この橋の桁には、耐候性鋼材(Ni、Cr、Cuが少し入っている)が使用されています。
3.梓川橋(長野自動車道)
【構造・桁断面】
⇒単純鈑桁+3径間連続鈑桁 × 2連+単純鈑桁
●側面図
4.梓橋(県道48号)
この橋は、複数の橋から構成されているため、少し複雑です。
・本橋:ゲルバー(Gerber)鈑桁橋 11径間
・拡幅部:4径間連続鈑桁橋 × 2連
・歩道橋:単純鈑桁橋 × 11連
ゲルバー構造を、別名「カンチレバー構造」ともいいます。詳しくは「橋梁の基礎知識 その1」をごらんください。
5.梓川橋(鉄道橋)
【通行位置・構造・桁断面】
⇒下路単純鈑桁橋 × 9連
●断面図
6.中央橋(県道320号)
【材料・構造・桁断面】
⇒ポストテンション方式プレストレストコンクリート単純T桁橋 × 5連
7.梓川橋(県道25号)
【工法・構造・桁断面】
⇒活荷重合成単純鈑桁橋 × 6連
8.八景山橋 – やけやまばし(市道)
【材料・構造】
⇒鉄筋コンクリート単純床版(スラブ)橋 × 4連
梓川が増水すると水没するため、通行止めになります。
9.新淵橋(国道158号)
【構造・桁断面】
⇒2径間連続鈑桁橋
この橋の桁には、耐候性鋼材が使用されています。
10.竜安橋
【桁側面・構造】
⇒ランガー桁橋
11.雑炊橋
【材料・構造】
⇒PC斜張橋
12.稲核橋
〇新橋(写真上)
【材料・通行位置・構造】
⇒鋼上路2ヒンジ・ソリッドリブアーチ橋
〇旧橋(写真下)
【材料・通行位置・構造】
⇒鋼上路スパンドレルブレーストアーチ橋
13.前川渡大橋
【通行位置・桁側面・構造】
⇒中路ローゼ桁橋
14.穂高橋(上高地)
【材料・構造】
⇒プレストレスト木床版橋
15.明神橋(上高地)
【構造】
⇒単径間無補剛吊橋
以上、橋梁の構造形式の表し方についてのご説明でした。