【事例紹介⑬】3次元測量データの利活用

過去の事例紹介「ドローン空撮レポート」の中で、i-Constructionや、取得した点群データの利用について触れました。
今回は「3次元測量データの利活用」と題し、もう少し掘り下げてご紹介いたします。

担当は、3D-CADを得意とする、諏訪支店主任の床尾です。

今回は、スマートインターチェンジ(IC)整備事業を例にご説明いたします。

設計事例-スマートインターチェンジ整備事業

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スマートICとは、ETC装着車限定のインターチェンジで、簡易的な料金所で済むことから低コストで導入できるメリットがあります。
サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)接続型は、加速・減速車線が既存の施設を使える点や、比較的平坦な場所にあり土地に余裕がある場合が多いため、設計上、比較的容易に接続することが可能です。

本線直結型は、高速道路本線へ直接アクセス路を接続させるものです。SA・PAの存在しない箇所に設置することができますが、上図のようにアクセス道路が交差している箇所に設置されることが多いです。

2次元CADで作成した平面図

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上図は、2次元CADで描いた平面図の一部です。紙に印刷した状態で見やすいように特化していることがわかると思います。
例えば赤い線が道路形状や構造物を示し、緑線が土を盛っている場所、オレンジ線が土を掘っている場所を示しています。

それでは、次のセクションから3次元設計の話に入っていきます!

3次元モデル作成の手順

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土木業界において、「測量」と「設計」と「工事」は切り離せない関係なのは、既にご存知の通りだと思います。
製造業では、ずいぶん前から3次元設計および3次元モデルが使われていました。今では、3Dプリンタのおかげで、
設計が終われば自動的に製品ができてしまう世界です。

一方、土木・建築業界はというと、紙媒体の設計図を元に工事を行うという手法が、長年とられてきました。
そのため、これまでの測量は、3次元の空間を2次元の図面に変換する作業が必要でした。
しかし、近年は3次元データを使った工事や、3次元データの設計が可能になったことにより、測量においても3次元測量が求められるようになったのです。

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従来の設計が、2次元の設計図を作ることを目的としていたことに対し、3次元設計とは3次元モデルを作ることが求められます。
3次元モデルを作るにあたり、上図に示すように、現況地形モデル設計計画モデルで分け順を追ってご説明します。

3次元モデル作成-①現況地形モデルの作成

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現況地形モデル作成では、UAV等を使用した3次元測量により得られた点群データを使用します。
点群データとは、上図にあるように1点ずつXYZ座標及び色情報をもったデータのことです。今回の事例では5センチ間隔で計測を行ったため、全部で160万弱の点群データを使いました。

点群の図化

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先ほどの点群データをそのまま図化すると、上図のようになります。これだけでも、かなり立体的に見えますね。

3次元モデルを作成するには、まず、点群データから面データ(surface)を作成する必要があります。
点群データの隣り合う点と点を結び、三角形を作ります。この三角形の集合が面データとなるのです。
膨大な数の三角形を作成するわけですが、コンピュータが自動処理で作ってくれます。

三次元モデル図

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作成した3次元モデルの一部です。多数の三角形で構成されているのがおわかりになりますか?

現況地形モデル全体

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全体を映したものです。前に示した図は、赤枠の部分を拡大したものです。
これで現況の地形を再現した3次元モデルは完成です。
場合によっては、さらに地質調査を行い、地表の下、地層の面データを作成することも可能です。

3次元モデル作成-②設計計画モデルの作成

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続いて、設計計画モデルの作成についてご説明します。
スマートICを設計する前に、周辺道路、地形、地質、建物の有無など調査し、設計条件を決定します。
(その部分だけでも非常に長くなってしまうため、今回は省略します。)

道路中心線

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先ほど作成した地形モデル及び設計条件に合わせ、平面形状を計画します。
平面形状の主な要素である道路の中心線を設定します。この事例では中心線を8本設定しました。

なお、この図では、中心線を見やすくするために地形モデルを非表示にしてあります。

中心線の高さ設定

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先ほどの中心線に対して高さを設定していきます。中心線は8本ありましたが、例として2本だけ示します。
また、高低差を分かりやすくするために、この図では、縦横比を変えて縦方向(高さ)を5倍しています。
赤い線が、計画する道路の高さを設定している状態です。黒い線で示されているように、平面形状が決まった時点でその線に沿った地形が表示されるため、地形を参考にしながら、道路の高さを設定することができます。

断面モデルの作成

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次に中心線に対する断面モデルを作成します。
真ん中の支点が平面形状及び縦断形状に従って変化し、両端の黄色い旗の位置で拡幅・勾配に従って変化するように設定します。
一番外側は地形モデルにぶつかるまで伸びるように設定します。構造物を設置する場合であっても同様に設定します。

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左図は、中心線に対する断面形状を示したもので、白い線が地形の形状になります。外側の線が地形にぶつかるまで伸びているのがわかります。
あとは、右図のように、断面の描画間隔を設定すれば、設計計画モデルが完成します。
地形モデルと同じように、断面同士が三角形で結ばれ計画モデルの面データができていることがわかると思います。

全体図は下図のようになります。
右の2次元CADで描いた平面図と比較してご覧ください。
(左の3Dモデルは、見やすいように計画モデルと地形モデルが重なるところを表示しないようにしています。)

3次元モデル設計

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断面の描画間隔については、細かくすれば精度が高まりますが、処理速度やデータ容量が重くなります。逆に描画間隔を粗くすれば精度が下がりますが、処理速度やデータ容量が軽くなります。

以上で、3次元モデルは完成です。

このあとは、3次元モデルの活用事例をご紹介します。

3次元モデルの活用-①パース図の作成

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上は、パース図(完成予想図)の例です。
作成方法は、地形モデルに対しては航空写真等を張り合わせることで小さな三角形一つ一つに色を付けます。

計画モデルに対しては、舗装や法面などの色を指定すれば完成します。3次元モデルに対して見た目を変更しているだけなので、難しいものではありません。

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プレゼン用に、このような回転パース図を作成することも可能です(このサイト上では回転しません)。

3次元モデルの活用-②土量計算
土量計算スライド

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土量計算というのは計画した道路がどれだけ土を掘ればいいのか、盛ればいいのか。そして土が足りないのか、余るのか・・・など、道路を設計するうえで重要な事項となります。
3次元モデルを作成すると、上図のように地形モデルと計画モデルの差分から土量が自動的に算出されます。
※グラフの赤が切土(土を掘る部分)、緑が盛土(土を盛る部分)。上の図では、全体として切土のほうがやや多いことがわかります。

従来、土量計算はものすごく手間と時間がかかる作業でした。土量計算をご存じない方のために、従来の算出方法を紹介します。

土量計算スライド

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《 土量計算(従来手法)》
① 現地に行き、横断地形を平面形状にそって20m間隔で測量
② 机上にて地形形状と計画形状を描き、断面積を計測
③ 前後で断面積を平均し、延長を乗算して体積を算出
④ 全区間の体積を全て加算

上記のように、20m間隔で平均して算出する方法なので、精度が悪かったのですが、他に手法が無いのでこのような方法を使っていました。
しかし、3次元モデルにおいては断面描画間隔の設定にもよりますが、かなりの精度で(しかも簡単に)土量計算がされています。

3次元モデルの活用-③計画モデルを活用した工事手法

冒頭に3次元データを使用した工事ができるようになったと少し触れました。
土木工事で活躍する建機にMC・MG建機が登場したことにより、3D設計データを使用した土木工事が可能になったのです。

※ 3DMC・3DMGブルドーザ
作業装置下端または履帯下面の3次元座標をTSまたはGNSSによる測位から求め、建設機械本体に搭載するMC・MG用の3次元設計データと比較した結果で作業装置の高さや傾きを自動制御(MC)、またはモニターによりガイダンス(MG)するブルドーザをいう。(引用:一般社団法人 日本建設機械施工協会)

従来施工からICT施工へ

MCブルドーザによる敷均し(出展:国土交通省HP)

MGによる掘削、切土

MGによる掘削、切土(出展:国土交通省HP)

 期待される効果  
・作業の効率化 
オペレータの負担を減らし、工期短縮や省人化といった効果が得られます。
・施工品質確保(信頼性)の向上 
従来施工では、許容値以内ではありますが、ばらつきがありました。
ICT活用施工では、施工高に対し一定施工が可能であり、ばらつきが極めて少ないため、手戻りが大幅に減少します。

業界の垣根を越えて・・・

① 自動運転自動車向け高精度3次元地図
現在自動車メーカー各社で開発している自動運転技術の中で、自動車が高精度地図を頼りに走行するシステムを開発中であり、そのデータ作成に点群データが用いられています。

② 体験型アトラクション(VR)への利用
点群データをVR(仮想現実)と組み合わせ、会社に居ながら現場の視察、点検、安全訓練を実施するといったことも可能となってきました。
今後は、観光名所の3次元測量を行って、自宅に居ながら仮想旅行といったアトラクションも現実になることでしょう。

 

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