今回は、都市計画関連業務の事例として、明科駅前広場の設計業務について紹介します。
2023年10月28日に、安曇野の東の玄関口として知られる明科駅の駅前広場が完成し、竣工式が執り行われました。安曇野市が2018年度から推進してきたこのプロジェクトにおいて、当社は事業開始時から測量、計画、設計、監理業務まで携わりました。
明科駅前広場設計業務の主な内容
基本設計業務
計画条件の整理
現況の問題点を洗い出し、課題を整理したうえで、必要な機能に対し何が必要なのかという、基礎的な事項を決めました。現地踏査やワークショップ形式での意見交換会の結果から、明科駅前広場では、次のような課題があげられました。
- 国道19号と駅前広場との車両出入りが困難
- 送迎車両、バス、タクシーの使用位置及びスペースの不明確さによるロータリーの混雑
- 人、自転車と車両の動線の輻そうによる接触事故の危険、人流の集中によるはみ出しの危険
- 観光客用の駐車場の不足
- 災害時に避難所として利用できるようなスペースの不足
- 観光案内などの情報の入手困難さ
- 憩い空間の不足、緑化不足
基本方針の策定
駅前広場に備えるべき「交通結節点として機能」と、「都市の広場としての機能」を適切に組み合わせて、より利便性の高い駅前空間を創出するため、次のように基本方針を定めました。
基本構想の策定
基本計画で得られた必要な施設等に対し、全体配置計画、導線計画、施設配置計画、景観計画を立案しました。
基本設計
基本構想に基づき、概略図面の作成、概算数量、概算工事費の算出等を行いました。
【概算数量と概算工事費について】
概算数量とは、建設工事において各工事項目ごとに予想される数量のことです。
具体的な工事の種類によって異なり、例えば、土工では土砂掘削は何立法メートルになるか?舗装工では駐車場のアスファルト舗装が何平方メートル必要か?排水工では、どのような規格の集水桝が何基必要か?といったように、一つ一つの数量を積み上げ概算工事費を算出します。
その他にも、地元や関連機関からの意見を集め、駅前広場の整備方針に関して関係者間での合意形成を進めました。
定期的に行われたワークショップ形式の意見交換会では、駅前広場の未来の利用方法や施設の整備方針、動線などを検討しました。
詳細設計業務
基本設計の段階で作成した概略図面を基に、工事発注に必要な精度の詳細図面を作成し、数量や工事費を算出しました。
設計監理業務
明科駅前広場基本計画に基づき、周辺関連事業との整合を取り、施工予定の建築物に関わる監理業務を実施しました。
関連業務
・平成29年度 都市再生整備計画関連事業 明科駅前広場測量・基本設計業務委託
・平成30年度 都市再生整備計画事業 明科駅前広場実施設計業務委託
・平成30年度 都市再生整備計画事業 明科駅前広場実施設計に伴う調査業務委託
・平成30年度 都市再生整備計画事業 明科駅前広場実施設計に伴う測量業務委託
・平成30年度 都市再生整備計画事業 明科駅前広場進入路 用地測量業務委託
・令和2年度 都市構造再編集中支援事業 明科駅前広場流量計算業務委託
・令和3年度 都市構造再編集中支援事業 明科駅前広場設計監理業務委託
技術者インタビュー
明科駅前広場設計業務には、当社の道路チームに所属する女性技術員Tさんが主担当者として関わっていました。
都市計画系を得意とするTさんに、改めて今回の業務について話を聞いてみました。
Tさん、今回の設計業務で大変だった事や工夫した点はどのようなところですか?
明科駅前の国道19号の歩道拡張に伴い、従来の駅前広場の面積が縮小することは予想されていました。
しかし、駅利用者の駐車場、バス停、タクシー乗り場など、必要な機能が多数あり、限られた空間内でこれらの施設を利用者の動線を考慮して配置することはかなりの挑戦でした。
私もTさんと一緒に地域住民の皆さんとのワークショップに参加させていただきましたが、それぞれの立場から様々なご要望やご意見が出て、どのように集約するのかとっても気になっていました。
工事が進む中で、明科駅の新しい駅舎の建設など、現場の進捗に合わせた工事発注が必要とされ、細分化された各工区に対して図面や数量の作成が求められ、非常に手間がかかりました。
それだけに、無事広場が完成した時には心底ほっとしました。
そんなことがあったんですね。( ゚Д゚)
明科駅前広場がこれから安曇野市の東の玄関口として地域活性化の起点となり、地域住民にとってますます愛される場所になってほしいですね。
Tさん、ありがとうございました。