【事例紹介⑩】ドローン 空撮レポート! ~ドローンってなんだろう?~

こんにちは。Webサイト担当のMです。弊社ホームページをごらんいただき、ありがとうございます。

空撮やインフラの点検、測量等、さまざまな分野で活用が進む、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)。
長野技研でも、橋梁点検や災害調査等で「ドローン」がよく使用されています。

新聞やニュースなどでよく耳にする「ドローン」ですが、どこでも自由に飛行できるわけではありません。場所によっては国からの許可・承認が必要です。

ドローンとはいったいどのようなもので、どういった許可が必要なのか?
そして、
撮影した画像がどのように活用されるのかを、現場レポートを織り交ぜて、解説していきたいと思います。

i-Constructionについて

「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という言葉をご存じですか?
「i-Construction」とは、国土交通省が掲げる20個の生産性革命プロジェクトのうちの一つで、測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICT(情報通信技術)を導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組みです。

国土交通省は、次の3つの柱を「トップランナー施策」として定め、2016年度から本格的に推し進めています。(詳しくは、国土交通省のホームページをご覧ください。

1.  土工事におけるICTの全面的な活用
2.  コンクリート工事の規格の標準化など全体最適の導入
3.  施工時期の平準化


ドローンの活用は、上の3つの柱の1つである「1.ICTの全面的な活用」の一環に位置付けられています。
ちなみに、ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。

出典:国土交通省 「i-Construction の最新動向」

そもそも、ドローンってなに?

ドローンとは、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)の通称です。ほぼ同じ意味でUAS (Unmanned Aircraft Systems)と呼ばれることもあります。
UAVは、無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる航空機の総称です。UAVを使用することで国土交通省が進める「i-Construction」に関わる測量や、インフラの維持管理、災害発生時の被災状況の早期把握、人の立ち入りが困難な箇所での調査等に活躍が期待されています。

ドローンの種類

ドローンは、使用用途や目的により、ホビー用から産業・商用向けまで幅広くあります。

  ホビー用  
個人が趣味や遊びで使用するタイプ。手軽に使えるため、室内飛行や本格的ドローンの練習用に適しています。

【メリット】
・安価:数千円程度で購入可能。
・軽量:200g以上の重さのドローンは飛行できる場所に制限がありますが、ホビー用であれば200g未満の機体がほとんどのため、航空法の規制の対象外となります。
ただし地域、場所によってはドローン禁止等の所もあるので要注意)
【デメリット】
・飛行時間が短い:ものにもよりますが、5分~10分程度がほとんど
・性能が低い:カメラがついていない、またはついていても解像度が低い、GPSやセンサーがついていない・・・など、当然ながら価格なりのスペック
・風に弱い:軽量であるがゆえ、少しでも風があると飛ばされてしまう

 産業・商業用 

空撮、測量、農薬散布、点検、探索、物資運搬など、業務用として使用するタイプ。(長野技研が所有するドローンはこちらのタイプです。)

【メリット】
・高性能:GPS自律制御、自動帰還/追跡機能、プログラム飛行、衝突回避機能などが標準装備
・安定した長時間の飛行が可能

【デメリット】
・高額:基本的には10万円以上。レーザースキャナを搭載したモデルでは、一式数千万円も珍しくありません!

ドローン飛行の規制:航空法

障害物を検知して自動回避したり、自動で離陸地点まで帰還する機能を搭載するなど、昨今のドローンは安全性が向上しています。しかし、電波障害や突風、バッテリー切れ、機体の誤作動などによる墜落事故を100パーセント完全に防ぎきることはできません。
そのため、ドローンの利用に対しては航空法をはじめ、様々な法律による規制が存在しています。また、航空法の適用外となる200g未満のホビー用ドローンであっても、小型無人機等飛行禁止法道路交通法などの規制に配慮した飛行が求められます。

航空法:200g以上のドローンのみに適用
ドローンに関する規制のなかで、最も中心的存在となるのが「航空法」です。
以下に該当する場合は、事前に国土交通省に申請を行い、許可や承認を受ける必要があります。

飛行の許可が必要となる空域(出典:国土交通省ホームページ)

承認が必要となる飛行の方法(出典:国土交通省ホームページ)

参考までに・・・
長野技研は、次の飛行許可及び承認を取得しています。
 ・人口集中地区においての飛行(航空法第132条第2号)
 ・目視外飛行においての飛行(航空法第132条の2第2号)
 ・人また物件から30m未満においての飛行(航空法第132条の2第3号)

 

ドローン飛行の規制:その他の規制

航空法以外にも様々な規制があります。以下は、200g未満のドローンにおいても対象となります。
電波法
文化財保護法
プライバシー・肖像権や個人情報保護法
道路交通法
小型無人機等飛行禁止法
民法(土地所有権の侵害)
各種条例(地方公共団体)
都市公園法、自然公園法、河川法・・・・などなど
詳しくは、国土交通省ホームページをごらんください。)

ドローン本体各部の名称

こちらが弊社で使用しているドローン、DJI社製 Mavic Proです。

【主な仕様】

・寸法(プロペラを折りたたんだ状態)
            高さ83×幅83×奥行198mm
・重量 743g(最大離陸重量820g)
・最高速度 64.8km/h
・航行可能限界高度 5000m
・電波到達距離 4km
・飛行可能風速 10m/s
・最大搭載可能重量 77g
・最大使用可能時間 27分
・ビジョンポジショニング対応高度 0.3~13 m
 
 
 
ジンバル:カメラの映像がブレないように衝撃を吸収する装置。このドローンには、X軸、Y軸、Z軸の3軸のジンバルが搭載されています。
障害回避センサー:超音波により障害物を検知します。この機体では前方と下方にセンサーが搭載されています。
スキッド:ドローンの足にあたります。
 
 
また、機体底面には、地面を観測するための光学カメラと2つの超音波センサーが搭載されています。
これらの機能を使って地面との距離を測定し、GPSキャッチができない場所でも安定したホバリング(※)や飛行を実現しています。
ただし!この機能は、高度や、地面・床面の状態によりパフォーマンスが低下したり、機能がオフとなるため、操縦に慣れていないと衝突・墜落に繋がるので十分な注意が必要です。

(※ホバリング:ドローンを空中で安定した状態でキープさせる操作)
 
 
上の黒い物体が送信機です。いわゆるコントローラーです。
弊社では撮影中の画像を確認するため、iPadを接続して使用しています。
いざ、空撮へ!
この日は、公園整備設計関連業務のため、現況写真を撮影する社員に同行しました。
(事前に、公園管理者から飛行許可を得ております。)
Mavic Proの最も特徴的なところは、折りたたみ式という点。持ち運びが容易なうえ、プロペラの開閉もあっという間にできること。

 
さらに、743gという驚きの軽量、ご覧のとおり片手で楽々持つことができます。
 
 
ドローンは軽ければ良いというわけではありません。上空を飛行するドローンは風の抵抗をもろにうけるため、機体が軽いと当然飛行中の安定性が悪くなります。
飛行させて帰還させるときに、向かい風が強くて帰ってこれない・・・なんてことも起こり得ます。
ですので、仕様で定められた飛行可能風速(Mavic PROの場合は風速10m/s)を超えるの環境下での飛行は、避けなければなりません。

本日の操縦者はN室長。十分な操縦訓練を受け、長野技研では空撮の第一人者です。
上空の複数地点からホバリング撮影を行い、最終的に1枚の航空画像に仕上げる計画です。

 
現地到着後、撮影予定範囲内を実際に歩き、安全確認を行います。

ドローン飛行前の主なチェック項目
 ✓ 現地の確認
・天候、気温、風速等に問題はないか?

・電線や樹木など安全飛行に影響を及ぼす障害物はないか?
・周囲に高圧電線や鉄塔などの電波干渉の可能性がある場所ではないか?
・飛行エリアに、第三者(関係者以外)がいないか?
・GPSの衛星数は十分か?

 ✓ 機体の確認
・バッテリーは十分充電されているか?
飛行予定時間に十分な余裕はあるか?
・機体の各パーツのゆるみはないか?
・モーター音に異常はないか?
・高度の設定は適切か?
 ✓ その他
・操縦者の体調は万全か?
 
 
今回の飛行では、『DJI GS Pro』というドローン自動操縦アプリを使います。
ipadからアプリを起動し、飛行範囲、飛行経路、飛行高度、画像解像度、撮影オーバーラップ率等、撮影条件を設定すると、ドローンが自動で離陸、飛行、撮影、着陸までを行います。
(地図データを取得するため、モバイルルーターが必要です)

 
設定完了!ドローンには、安全のためプロペラガードを取付けます。
 
飛行開始!ふわりと浮き上がったかと思うと
 
あっという間に高度を上げ
 
は、速いっ! 🙄
 
高度約75m、指定したルートを移動しながら、ホバリング撮影を続けていきます。
 
飛行中、機体に異常がないか?障害物が近づいていないか?など、目視で監視する操縦士。
まれに鳥が近づいてくることもあり、飛行中は気が抜けません。

 
約16分後、1970mを飛行し、85箇所での撮影を終え、ドローンは無事に戻ってきました。
ドローン画像データの活用
ドローンで取得した画像データは、専用ソフトを使用することで3次元データの作成、土量計算や工事現場等の出来高管理まで行なうことが出来ます。

点群データ
ドローンにより取得した3D座標点(XYZ軸)の情報のことです。このデータを専用ソフトで加工することで、地形の計測やたい積土量の算出、3D CADモデルの作成、図面作成、出来形管理などが行えます。

例)3D CADソフトで作成したパース図

オルソ画像
ドローンで撮影した空中写真1枚毎に、正射変換(※)し、それらをつなぎ合わせることにより「電子国土基本図(オルソ画像)」を作成することができます。
オルソ画像は、写された像の形状が正しく、位置も正しく配置されているため、地理情報システム(GIS)などにおいて、画像上で位置、面積及び距離などを正確に計測することが可能で、地図データなどと重ね合わせて利用することができる地理空間情報です。
※正射変換:写真上の像の位置ずれをなくし真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換すること
 
下の画像は、今回撮影した画像をつなぎあわせオルソ画像に変換し、ArcMap上で標準地図に重ね合わせたものです。

以上、「ドローン空撮レポート ~ドローンってなんだろう?」をお届けいたしました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

関連リンク先
生産性革命プロジェクト(国土交通省)
i-Construction(国土交通省)
無人航空機(UAV)を用いた公共測量~UAV写真測量~(国土地理院)
無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(国土交通省)
無人航空機飛行マニュアル01(PDFファイル/国土交通省)
無人航空機飛行マニュアル02(PDFファイル/国土交通省)
オルソ画像について(国土地理院)
事故情報の投稿と一覧 UAS測量調査協議会)