【事例紹介⑮】3次元モデルのICT施工への活用(諏訪湖スマートIC計画)

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以前の事例紹介記事「3次元測量データの利活用」で、3次元計画モデルを活用した工事手法について触れましたが、今回はその実例をご紹介いたします。

ICT施工とは?

国土交通省では、建設現場の安全性と生産性向上のため、測量、設計、施工、さらに検査・管理における全プロセスでの、「ICT技術の全面的な活用」を新基準とした「i-Construction」(アイ・コンストラクション)を推進しています。
ICT施工」という用語は、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」を略した「ICT」と「土木施工」を組み合わせた用語です。一般的に「ICT施工」は、建設現場にICTを導入することを意味する用語として使われます。
国土交通省は、2022年3月に小規模な現場向けのICT施工の実施要領を公表し、中小企業での導入を促しています。

ICT施工のメリット

従来の施工法では、作業前に丁張りの設置作業などが必要でした。オペレーターは丁張りを確認しながらの作業となるため、仕上がりはオペレーターの腕によって左右されます。
また、作業中には補助員も設置しなければいけません。対して、ICT建機なら丁張りも補助員も不要となり、作業効率と安全性が大幅にアップします。

MGによる掘削、切土
MG(マシンガイダンス)による掘削、切土(出展:国土交通省HP)
丁張りとは?
丁張り(ちょうはり)とは、建物や構造物をつくるための施工基準となる、仮構造物です。
土木・建築工事における「高さ」「位置」「方向」などを木杭や水糸などを使って決めて示し、それに沿って建物や構造物をつくっていきます。



上の画像は、丁張りに沿って法面を整形した工事箇所です。(黄色く囲んだ部分)
従来手法では、丁張りと検測作業を繰り返しながら施工作業を行います。

ICT施工の流れ

1. 3次元測量

UAV(ドローン)やレーザスキャナを用いて測量を行い、施工前の現場の高密度な3次元点群データを短時間で取得します。

2.3次元設計データ作成

3D-CADを用いて、3次元設計データの作成を行います。また、3次元測量データ(現況地形)と設計図面との差分から、土量(切土、盛土)を自動算出します。

3.ICT建設機械による施工

3次元設計データ等により、ICT建設機械を自動制御します。

4.3次元出来高管理

UAV写真測量、レーザスキャナ等を活用した出来形管理計測を実施します。

5.3次元データの納品と検査

作成、利用した3次元データの納品と検査

今回の事例では、
2.3次元設計データ作成
3.ICT建設機械による施工 にスポットを当ててご紹介いたします。

業務概要

本業務は、2023年度供用開始予定の「諏訪湖スマートインターチェンジ整備計画」に伴って採掘するトンネルの坑口、その付近の仮設ヤードおよび仮設道路等の設計を3D-CADを用いて行うものです。
作成された3次元設計データは、ICT建設機械に取り込まれ自動制御による工事が行われます。

●業務名:令和3年度国補道路改築(地域連携)工事(平山トンネル)
●場 所:(主)諏訪辰野線 岡谷市~諏訪市 小坂~有賀(平山トンネル)
●発注先:(株)岡谷組
●工 期:2022/02/21 ~ 2023/05/31

●業務内容:トンネル坑口、仮設道路等の3次元設計データ作成
・3次元設計ソフトウェア(3D-CAD)を用いて、設計図書・基準点設置計画・現況3次元測量データに基づき3次元設計データを作成
・作成するデータについては全て土工作業のデータとし、構造物を除いた掘削面及び盛土面を示す面データを作成
(法枠工・切土補強土工・右側地山補強土工の掘削背面。仮舗装の路盤下面など)
●管理技術者:諏訪支店 床尾 亮一

本業務管理技術者:諏訪支店 床尾
出典:国土地理院ウェブサイト(地理院タイルを加工して作成)
工事前写真(起点側)
工事前写真(起点側)
工事前写真(終点側)
仮設平面図(起点)※クリックするとPDFファイルが開きます。
仮設平面図(終点)※クリックするとPDFファイルが開きます。

初回打合せ

2022年2月22日、(株)岡谷組様の工事事務所にて業務の打合せが行われました。
ICT施工の現場では、作成する3次元データがICT建機で読み込めず、施工者がデータを作り直す・・・といった手戻りが発生するケースも少なくありません。
そのようなことがないよう、作業着手時に3次元モデルの要件を相互に確認します。

左から床尾(諏訪事務所)、細野(営業部)、岡谷組の笠原様
本工事の現場監理者である岡谷組の笠原様、取材にご協力いただきありがとうございます

起点側3次元設計データ納品

2022年3月31日、起点側の3次元データを納品しました。

ビューアーを見ながら、設計データの確認作業を行います
ビューアーで見た3次元設計図(右が起点、黄色の線が本線) ※クリックすると拡大します

起点側 工事開始

① 4/1~4/5 ICT建機搭載データに変換
② 4/6~4/7 重機へのICT装置取付
③ 4/8 実施工事開始

起点側(グレーの部分が施工箇所) ※クリックすると拡大します
起点側(切土範囲を表示) 

ICT建設機械とは、3Dマシンコントロール3Dマシンガイダンスシステムが搭載された建設機械です。

  • 3Dマシンガイダンス:TS(トータルステーション)、GNSS(衛星測位システム)の計測技術を用いて、施工機械の位置情報・施工情報、及び現場状況(施工状況)と設計値(三次元データ)との差異を車載モニタを通じてオペレータに提供し、操作をサポートする技術
  • 3Dマシンコントロール:マシンガイダンス技術に施工機械の油圧制御技術を組み合わせて、設計値(3次元データ)に従って機械をリアルタイムに自動制御し施工を行う技術

自動車でいうと、マシンガイダンスはカーナビゲーションマシンコントロールは自動運転・・・と想像していただくとわかりやすいかもしれません。

マシンガイダンスは、既存の建設機械に後付けで搭載でき、導入費用が比較的割安ですが、TSやGNSSからの情報が届かない状況では活用できないというデメリットがあります。
マシンコントロールは、事前に入力した設計数値に合わせ自動制御してくれるため、掘り過ぎを防止でき、経験の浅いオペレーターでも難しい仕上げを実現できるというメリットがある一方、コスト面が高いというデメリットがあります。

国土交通省が2022年3月に公表した小規模現場向けのICT施工の実施要領では、後付け型装置(マシンガイダンス)の使用方法が盛り込まれています。
今回の工事では、マシンガイダンスシステム搭載のICT建機を使用しています。

ICT建機(2022年4月12日撮影)
車載モニター(2022年4月12日撮影)

ICT建機などでGNSS測位を利用するとき、衛星測位解析結果を現場の基準点座標と整合するように補正する必要があります。これをローカライゼーションと呼び、施工範囲を取り囲むように基準点を配置してGNSS測量機器により計測します。
このローカライゼーションは、工事完成時の精度に大きく関わる重要な作業になります。

ローカライゼーション(2022年4月12日撮影)
ローカライゼーション(2022年4月12日撮影)

施工中の画像を見ていただくと、丁張り無しで作業していることが確認できます。オペレータは、モニタに表示される設計とバケット位置(高さや勾配)の差を確認しながら作業ができ、正確な作業が行えると共に作業負担が軽減されます。
実際、現場監理者から「オペレーターはすごい楽そうで羨ましい」という声が聞かれるほど。
また、バケット位置が常にモニタに表示されるため、複雑な形状の掘削や、刃先の見えにくい場所、水面下での作業においても、設計どおりの施工が可能となります。

油圧ショベル(バックホウ)による掘削(2022年4月12日撮影)
施工箇所全景(2022年4月12日撮影)

起点側 ICT工事進捗度 約30%(2022/5/13)

工事進捗度 約30%(2022年5月13日撮影)
工事進捗度 約30%(2022年5月13日撮影)

起点側 ICT工事進捗度 約50%(2022/6/3)

工事進捗度 約50%(2022年6月3日撮影)
工事進捗度 約50%(2022年6月3日撮影)

起点側 ICT工事進捗度 約80%(2022/6/28)

工事進捗度 約80%(2022年6月28日撮影)
工事進捗度 約80%(2022年6月28日撮影)
工事進捗度 約80%(2022年6月28日撮影)

起点側 ICT工事進捗度 100%(2022/7/13)

掘削工事が終わりました。

掘削工事 終了(2022年7月13日撮影)
掘削工事終了(2022年7月13日撮影)

終点側 ICT工事開始(2022/6)

こちらは、終点側です。

終点側(グレーの部分が施工箇所) 
終点側(切土範囲を表示)

終点側 ICT工事進捗度 約30%(2022/7/13)

終点工事 進捗約30%(2022年7月13日撮影)
終点工事 進捗約30%(2022年7月13日撮影

工事の進捗状況は、引き続きご紹介していきます。